運命的な出会いを遂げながら結ばれることなく一夜限りで離別を余儀なくされたルイスとライラ。ライラはその夜に授かった息子エヴァンと知らぬ間に引き裂かれる。孤児院に引き取られた少年エヴァンは、その身に宿る音楽の天賦の才を開花させ、ストリートミュージシャンとしての成長を遂げる。いつか両親と再会できると信じるエヴァン、11年の時を経て息子の存在を知らされるライラ、そして父ルイス。音楽を愛し、そして楽しむ互いの調べに3人は引き寄せられていく。
私の視点
筆者である私は、子どもの時分に走ることが好きで好きで
仕方がなかった。しかし、陸上部に所属し大会で勝つことで
「この地位を守りたい」
という欲望が身体の深層から染み出してきた。欲望だけが
夕闇のように広がっていく。走ることは楽しくなくなった。
エヴァンは音楽を楽しみ続けた。彼を利用しようとする
者の手も少年に忍び寄った。しかし彼は「音楽を楽しむ」
という堅牢たる原点を守り続ける。視聴者一人ひとりが
そんな純粋無垢な少年の姿と、若かりし頃の自分の姿を
重ねあわせるだろう。予定調和な構成であることは否めない
が、音楽を、そして「家族」を愛する3人の姿にただただ
エールを送りたくなる作品。