
ブタがいた教室


新任教師の情熱と、それに応える
生徒たちの姿に思わず目頭が熱くなる。
15年前のドキュメンタリーの映画化。
評価:★★★★★
【あらすじ(goo映画「ブタがいた教室」より)】
「卒業までの1年間でブタを飼育し、最後にはみんなで食べたいと思います」─新任の星先生の提案に6年2組は騒然となる。校庭の片隅に小屋を作り、掃除、エサやリなど生まれて初めての経験に戸惑いながらも、成長してゆくブタに愛着を抱いてゆく子どもたち。“Pちゃん”と名づけ、家畜ではなくペットとして慈しむようになるが、卒業の時は迫り、Pちゃんを「食べる」「食べない」で教室を二分する大論争が巻き起こる。
【コメント「ブタがいた教室」】
在京キー局の新卒採用説明会でのことでした。リクルートスーツをまとう私たちの前に表れたのは、その局の看板ニュース番組のディレクターを勤める社員の方でした。
「これまで印象に残っている番組は?」という学生の問いに対して彼が挙げた番組が、93年にドキュメンタリーとして放送され本映画の元になった『小ブタのPちゃん』でした。
それ以来どんな作品なんだろうと思っていた作品が昨年映画化され、ついに来月DVDが発売されます。私は映画館で観ようと思っていたのですが、機会がありませんでした。今回海外旅行に行く際の機内でようやく観ることができました。
この映画は喜怒哀楽を激しく感じられるような場面が冒頭から最後まで目白押しです。星先生が保護者の吊るし上げにあう場面、生徒たちが想像力を駆使してPちゃんの小屋を作る場面、大雨が学校を襲う場面、Pちゃんの今後をディスカッションする場面、そして結末。そのひとつひとつの場面が高度なリアリティを伴っているのです。
星先生、他の先生方、子どもたち、保護者たちなど、いろいろな立場の人の心の葛藤に共感し、そして考えさせられるのです。「おくりびと」も良い作品だと思いますが、この作品もまた日本映画の傑作でないかと思います。
私には子どもはいませんが、子どもがいる方は星先生やクラスの子どもたちに対して、さらに多くの感情を抱かれることでしょう。しかし星先生が生徒たちに「正しい答えはない」言うように、観る人の感じ方にもまた「正しい答えはない」のだと思います。
私は自分の子どもがこんな授業を受けることができたら豊かな体験になるのだろうなぁと思います。このような体験をした生徒たちは食物の大切さを考えるということに加えて、身近な存在の「死」を明確に意識することになると思います。
育てたブタを食べることは残酷か。これに対しては様ざまな意見があると思います。私はたとえそのことが残酷であっても良いのではないかと思います。残酷なことを「残酷である」と子どもたちがしっかり意識しながら、ブタと向き合うのであればそれはまた貴重な体験でしょう。
この映画のDVDが発売されれば多くの小学校で道徳の授業で用いられるでしょう。先生と生徒、親と子が一緒になって繰り返し観てもらいたい作品です。
